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[黒織部茶碗 銘「板庇(いたひさし)」]

【日本】| 桃山時代(17世紀)

黒織部茶碗画像

この茶碗は上から見ると州浜形にゆがめられた(くつ)茶碗です。この茶碗は、厚みのある側面に横筋がめぐらされ、腰のあたりは帯状に一段と厚くなった、量感のある力強い造形です。
 側面と見込みに黒色で文様が施され、片側には胎土の上に縦線を並べ、その上に五角形の文様を描いています。もう一方の側面には、黒地に白抜きで三角形が3つと縦線が2本表され、見込みには串団子を思わせる文様が見られます。これらの豊かな装飾が、力強い造形にのびやかさのある雰囲気をもたらしています。
  高台内には”T”の窯印が箆彫(へらぼ)りされています。
銘「板庇」は、千載和歌集・源師俊の次の一首に由来すると考えられます。

播磨路や 須磨の関屋の 板庇
月もれとてや まばらなるらん  

この和歌に詠まれた、月の光が板庇の隙間からこぼれ落ちる情景が、茶碗側面の線状文様や五角形の構成から連想されたと見られます。

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